「コードバンは扱いづらい」
「雨に弱く、雑多に濡らしてはいけない為に気を遣う」
「すれ傷がつきやすく丁寧に扱わなければいけないのでは」
その様な印象を持たれている方は多いと思います。
しかし、
コードバン繊維の特徴や水分と油分のバランスを知ることで自分好みのエイジングが簡単にお楽しみいただけます。
目次
―知識編―
―実践編―
コードバン繊維と光沢の関係
コードバンは他の皮革には見られない独特の艶となめらかさを持ち合わせた素材です。その要因は細く透明なコラーゲン繊維が林立し密集している事で成り立っています。(コードバンとは参照)
このコラーゲン繊維をグレージングマシンという機械で幾度となく圧縮させることで、表面繊維が一定の方向へ寝かしつけられ平滑になり光の反射が安定して透明な光沢が生まれます。
メンテナンスの際はこのコラーゲン繊維に着目し、革が保有する水分と油分の量を調節する事でお好みの状態へと変化させることが可能になります。
水分と油分はなぜ必要なのか
普段私たちが触れている天然皮革の製品は生きていた動物達の皮です。言い換えれば私たちの肌と同じような物質を鞣す事で強靭な革へと進化させたのが皮革なのです。
鞣しとはナマモノである皮を腐りずらくする為の技術ですが、皮自体を劇的に変化させ違う物質に変えるものではありません。その為、タンニン鞣しをされた革は長い期間放置すると元の皮へと戻り土に返るのです。
人間の場合スキンケアと聞いてまず思い浮かぶのは化粧水と乳液の使用ではないでしょうか。
これは肌に潤いを与え保湿する事で乾燥を防ぎ最適な環境を作り上げるための行為ですが、革の場合も同じ考え方で対応できます。
コラーゲン繊維にとって適切な水分(化粧水)を保持するために油分と蝋分の入ったケアワックス(乳液)を使用することで、ひび割れや亀裂・柔軟性の低下を防ぎ繊維の劣化を遅らせる事が出来るのです。
つまり、革に合った適切な水分と油分を与えることが、メンテナンスにおいて必要不可欠なことなのです。
また、この水分と油分のバランスがコードバンの輝きに大きく影響を与えます。(FAQを参照)
「張りのある強い光沢を目指す」
原理:コードバンは初期の段階でグレージングマシンにより強い圧力を掛け繊維を圧縮しております。
この圧縮をキープしたまま必要量の保湿オイルで状態を保つことで鋭いツヤが増していきます。
対処方(アニリン染め)
メンテナンス時は主に油分の少ないケアワックスを使用し、適量を塗布後にクロスなどで磨いてください。
乳化しているものや油分の多いワックスは繊維の奥に入り込み、圧縮がほどけてしまう原因になりますのでお気を付けください。
表面が乾燥している場合にはワックス塗布後にぬれティッシュなどで水分補給をさせた後にケアブラシや布で繊維を寝かしつけてください。ただし、水分の付けすぎは繊維を起こす原因となる為、軽く湿らせる程度にしてください。
対処方(オイルコードバン)
もともとオイル分が多い特性がある為、メンテナンス時はワックスの量を少なめに塗布して下さい。
使い始めであれば乾拭きの回数を増やしたり専用の道具でしっかりと磨き、繊維を寝かしつける事で強い光沢が生まれます。
「しっとりとした奥行きのある光沢を目指す」
原理:コードバンのブーツなどに見られるしっとりとした深いツヤは繊維内に多くの油と水分が含まれている事が要因となっています。
繊維の圧縮を緩める事で隙間が生まれ、そこに適量の油分が入り込むことで視覚に奥行きが生まれ深く透き通ったツヤが生まれるのです。
対処方(アニリン染め)
使い始めは繊維が強い力で圧縮されている為なかなか柔らかくなりません、メンテナンス時にワックスを多めに塗布し染み込ませることで繊維がほぐれ、コードバン層に奥行きが生まれます。
ワックス塗布後に適量の水分を補給する事で変化を早める事が出来ます。
対処方(オイルコードバン)
オイルコードバンは水分・油分共に吸い込みやすい状態になっている為ワックスの付けすぎは曇りの原因になります。(時間が経てば油が蒸発し元に戻ります)
ワックスを適量塗布した後に5分程度その状態をキープさせ、繊維の目に沿ってケアブラシや布などで繊維を寝かしつけてつけたあと余分なワックスをふき取り優しくからぶきをして仕上げてください。
表面が乾燥している場合にはワックス塗布後にぬれティッシュなどで水分補給をさせた後にケアブラシや布で繊維を寝かしつけてください。ただし、水分の付けすぎは繊維を起こす原因(ブク)となる為、軽く湿らせる程度にしてください。尚、水分が付着して起きる水膨れ(ブク)の対処法はFAQをご参照ください。