「アニリン染めコードバンとオイルコードバン。一体なにが違うのでしょうか?」
アニリン染め
水性染料のみを使い「丘染め」と言われる技法で染め上げたコードバンです。
グレージングで極限まで繊維を寝かしつけた後に染色を行う事で、革本来の強い光沢と透明感を最大限に表現する事が出来ます。
長年使用しても張りやコシが持続し、タンニン鞣し特有のエイジング効果により表情の変化が楽しめます。
オイル仕上げ
グレージング前の革をドブ漬けと呼ばれる技法で染色し、のちにグレージングと再染色を行って作るコードバンです。
ドブ漬けとは「水染め」ともいわれる技法で、水性染料とブレンドオイルの入った液体に漬けこむことで繊維の中層まで色を入れる事が出来ます。さらに、アニリン染めよりも多くの油分を取り込むことで革の柔らかさが増し、靴をつり込む工程にも対応できます。
使用感はとてもしっとりとしており奥行きのある光沢が特徴です、使い込むほどに深いツヤが増していきます。
「革の表面に見られる模様やピンホールとは何ですか?」
トラとシワ
コードバンの表面には一部波打った様な模様が見られます。これらは通称「トラ・シワ」と呼ばれており、馬の育成状況により生成される筋肉や脂肪のパターン模様です。
コードバンの表面は一枚一枚すべて違った表情をしていますが、このトラとシワがその真骨頂であり、天然素材の魅力を引き立てる要因の一つです。
レザー商品の購入時にオリジナル要素が欲しい場合は是非探してみてください。経年変化と共に味わいが深くなり、より一層の愛着が湧いてくるはずです。
ピンホール
ピンホールとは革の表面に見られる細かな穴にあたる部分で、トラ・シワと同様にすべての革に存在します。
この模様は馬皮の毛根にあたる部分であり、革が呼吸をするために必要な構造です。ピンホールの大きさは革により異なりますが、これも天然皮革である証拠の一つと言えます。
「コードバンは水に弱いって本当ですか?」
ブクとは
コードバンの製品を使用する際、水滴が革に浸透し水玉の斑点模様が出来る事があります。これは通称「ブク」と呼ばれており、ユーザーにとっては一番の天敵とされる現象です。
レーデルオガワのコードバンは革の手触りや自然なエイジングを楽しんで頂くために表面にほとんどコーティングを張っておりません。その為、水分が付着すると繊維に直接水が入り込んでしまい、グレージングで寝かしつけた部分が起き上がってしまうのです。
ブクの対処法
- 濡れてしまった個所をすぐにふき取ってください。
- 陰干しでしっかりと乾燥させた後にケアワックスを塗って10分くらい置いておきます。
- ワックスの成分が浸透したら柔らかい布でワックスをふき取ってください。
- 仕上げ用のクロスで優しく素早く磨いてください。
- 月に1・2回程度(2)~(4)を繰り返してください。
一度繊維が起き上がってしまうと人力で元に戻すことは困難とされています。
しかし、コードバン繊維は常に空気中の水分やワックスなどの油分を吸排出しており、長年ご使用いただくことで徐々に繊維全体が落ち着き、ブクが周りと同化し目立たなくなります。小さなすれ傷なども同様に繊維を慣らす事で目立たなくなりますが、これは天然皮革ならではの修復機能と言えるでしょう。
尚、メンテナンスの概要欄に水分・油分の付き合い方が乗っておりますので是非ご参照ください。
「経年変化で色が変わっていきます、なぜでしょうか?」
レーデルオガワでは素材本来の色艶を楽しんで頂く為、染色時に水性染料を使用しています。
水性染料の特徴は光を通し鮮やかな発色を表現できる事ですが、顔料(インク)などと違って安定して定着するものではないため光・空気などの触媒反応により徐々に繊維から離れていきます。
その為、使用する方法や頻度・太陽や蛍光灯の光の当たり具合で色が変化していくのです。コードバンの本来の色はタンニン鞣し後の茶色であり、エイジングが進んでいくと飴色の様な濃い茶色へと深みを増していきます。
この素材がベースとなって染色された色も徐々に変化して行くので、始めは同じ様な製品が並んでいても使い方により個性豊かなモノへと進化します。
レーデルオガワではこの変化の流れを大切にしており、自然のもたらすエイジング効果を楽しんで頂ければと思っています。
「どの様なケアワックスを使えばよいのでしょうか?」
樹脂や塗料などを使っていないアニリン染めやオイルコードバンは繊維に直接触れられるため、水分と油分を吸収しやすい状態となっています。
その為、特別な目的が無ければ蝋分の多いワックスをご使用ください。オイル分が多く乳化された液状ワックスはグレージングによって寝かしつけられた繊維を起き上がらせてしまう(曇らせてしまう)要因となる為、使用量にご注意ください。
また、適切なワックスであってもオイルが多く吸収されると革の内部に油分が留まり曇りの原因となる事がありますが、革は常に呼吸をして油分も吸排出されておりますので数日で蒸発し元にもどりますのでご安心ください。